「検証してから作る」クリエイティブがCM制作の常識を変える
特許取得済み技術を用いた生活者反応リサーチツール
GMOプレイアド株式会社
- 事業責任者
- 有方教泰 様
テレビに加え、Webコンテンツが生活に浸透したことで、CM動画の需要は急速に拡大している。その一方では、広告主のイメージする通りの表現であるにも関わらず、生活者へ広告主の意図していない印象を与えてしまい、想定した広告効果に繋がらなかったり、トラブルに発展したりする事例が後を絶たない。
GMOプレイアド株式会社では、こうしたことを引き起こす要因のひとつが、従来のCM動画制作工程では放映前のCMに対して生活者がどのような印象を持つかを事前に定量的なリサーチができない点にあることに着目した。そして、それを実現するため、特許取得済み(※1)の感情取得技術を取り入れた動画チェックバックツール『PlayAds byGMO』および、リサーチに関連するサービスを提供している。この『PlayAds byGMO』の開発に、当社・ディマージシェアが長年協力してきた。
※1) 特許番号:6745393号
いままでのCM動画制作のあり方を変えたかったんです。
センスではなくデータでCM動画クリエイティブを評価
2018年に設立されたGMOプレイアド株式会社は、当初はCM動画クリエイティブに関するコンサルティングから始まり、現在では有方氏が事業責任者を務める『PlayAds byGMO』を軸にしたクリエイティブの事前リサーチサービスを提供している。
CM動画に対する生活者のリアルタイムな反応データを収集・分析する『PlayAds byGMO』は、これまでの制作フローの常識を変える、データに基づいたクリエイティブの実践を実現するツールだ。
従来、CM動画はクローズドな環境で制作されてきた。一般に、テレビやWebで第三者の目に触れるまでは、広告代理店のプロジェクトメンバーとクライアントとの限られた視点で企画・承認されていくことが常だ。
「そうすると、最終的に世に出たときになってはじめて、思ったような反応を得られなかったり、世の中の感覚とずれていて、誰かが傷つく表現になっていたりすることが露見する……という事態が起こりえます。」
CM動画で伝えたいメッセージが生活者の共感を呼ぶことができず、想定したプロモーションのリターンを得られなければ、少なからぬ広告費や時間的な損失に繋がる。万が一、広告の表現が引き金となって”炎上”すれば、広告主そのもののイメージや事業活動にも大きな影響を与えかねない。
GMOプレイアド社は『PlayAds byGMO』を通して提案しているのは、データに基づいてCM動画クリエイティブの評価をすることと、そのために慣習的に続いてきた制作フローを逆転させる、つまり「放映してから反応を調査する」のではなく「反応を検証してから放映する」フローにすることだ。
放映前のCM動画を『PlayAds byGMO』上にアップロードすると、GMOインターネットグループのGMOリサーチ&AI株式会社が保有する国内2,500万人を超える生活者モニターパネルによるレビューが提供される。レビューは動画のタイムラインに沿って一秒ごとにカットごとに付加され、生活者がどのカットにどんな反応を示したかが視覚的かつ定量的に示されるため、データに基づいて表現をブラッシュアップすることが可能だ。
「従来のCM動画制作の工程にも、一定の合理性はあると思うんです。たとえば大手の広告代理店さんには長年の圧倒的な知見・経験があるので、過去に制作した類似企業の事例や、膨大な表現のストックから提案できます。」
広告業界のスタンダードとなっているCM動画制作フローは、これまで十分に機能してきた。だからこそ、長年の実績に立脚する制作フローを、広告代理店みずからが根本的に変えることは容易ではない。
広告主にとってもそれは同じだ。一般的に、CM動画制作のスケジュールは非常にタイトである。制作工程を変更するには、あらゆる関係者との調整が必要になるので、ただでさえ多忙な制作現場のタスクが一気に膨れ上がることを避けたいと考えるのは当然だ。つまり現実問題としても「作ってから反応を検証する」のが、いままでは最善かつ唯一の手段だった。
しかし、企業からのメッセージに対する生活者ひとりひとりの印象が共有され、議論されることが当たり前になった今、従来のような放映後に反響を調査するフローでは、作り手と受け手のギャップを埋めることは難しい。放映前のリサーチによって、あらかじめ受け手である生活者のインサイトに沿っているか検証しておく必要があるのだ。
『PlayAds byGMO』はクリエイティブを議論するための”物差し”
生活者の目線を反映させたCM動画制作フローを提案する『PlayAds byGMO』だが、提供を開始した当初は顧客獲得に苦労したという。
「初めはクライアント様の賛同を得るのが難しかったですね。訪問した多くの企業で、当社や『PlayAds byGMO』の思想は理解されましたが、制作フローを変えることをすぐに受け入れられる企業は多くありませんでした。」
いわゆるナショナルクライアント(全国規模の大手広告主)は、数十年にわたってCMを放映し続けている。それだけ続けてきた制作工程を変えるのは容易ではない。
それでも、広告主への地道な営業を続けたことで、現在ではナショナルクライアント180社以上が『PlayAds byGMO』を利用するまでに成長した。近年では広告主側の意識も変わりつつあり、データに基づいたクリエイティブ制作への意欲が以前よりも高くなっているという。
たとえば、提案を作成した広告代理店のクリエイターが著名だったり、単純に自分の上司が好きそうな広告表現だったりすることもあるだろう。担当者の感覚でクリエイティブを評価しようとすれば、このようなさまざまなノイズが影響してくる。これらによるバイアスを排して、データという公正な基準で評価できる点が、クライアントの担当者には重宝されているという。
「クライアントの担当者様からは『PlayAds byGMO』は代理店や上司に対して定量的な議論を可能にする”自分たちの物差し”だと評価されています。」
生成AIを活用した機能の強化と新しいツール
『PlayAds byGMO』には現在、生成AIを活用した機能が実装されている。たとえば「コメントディスカバリーAI」は、CM動画を視聴したユーザーからのコメント群を分析し、頻出キーワードをグラフィカルに示したり、ネガティブ・ポジティブなコメントの傾向を要約したりすることで、クライアントの分析を補助する。また「インサイトファインダー」は動画1秒ごとに付与されたユーザーのリアクションデータを分析し、サマリーとして文章化する機能だ。これらを実装した背景には、クライアントからの要望の高度化があるという。
「今までは感覚でしか判断できなかったCM動画クリエイティブを定量的に評価する体験を経て、良い意味でクライアント様からのご要望も増えてきます。それに対する技術的な解決策のひとつが生成AIです。」
生成AIは定量化された生活者の反応データを、さらに見やすいサマリーという形に高速で出力する。反応データについてのサマリーを人の手で作成する場合、データを読み、文字にする過程でどうしても時間がかかってしまう。一分一秒でもはやくクライアント社内で共有したいシーンでは、この人手による時間差がネックになっていた。しかし、生成AIであれば一瞬でサマリーが出力できる。
「我々のサービスは時間的制約の厳しいCM動画制作の現場でご利用いただいているので、見るべきポイントを生成AIで素早く表示できることは、非常に好評です。生成AIであればサマリーを作成する際にバイアスもかからず、安心感があるという声も頂いていますね。」
GMOプレイアド社の生成AI活用はこれだけにとどまらない。現在あたらしく開発を進めているリサーチツール『Depth X』では、生成AIをフル活用している。
インターネット上で生活者からアンケートを収集する場合、ある質問への回答を深堀りしていくことは、ニーズや感情、行動の背景にある考え方を深く理解するために不可欠だ。たとえば、商品について興味があるかどうか、興味がある理由はなにか、その理由はいつから感じていたか……など、生活者の回答に応じて追加質問を提示することで、より具体的な情報を引き出せる。
こうしたネットリサーチでは事前に質問事項を設定しているため、生活者の回答に対して柔軟な追加質問を行うことは構造上難しい。
しかし『Depth X』は生成AIを活用することで、深堀りするための質問を動的に生成することを可能にする。たとえば、「なぜこの商品が必要でしたか?」という質問に対し「~という問題を解決したかったから」と回答されたとする。このとき、生成AIが「それはいつから考えていましたか?」などの質問をその場で表示する。これによって、現在普及しているネットリサーチで実現できなかった、臨機応変なインサイトの深堀りが可能になる。
「GMOインターネットグループでは、AIの活用にすごく力を入れていて、各サービスでAIをどう活用していくかは日々検討されています。グループの中でAI活用デザインコンテスト(『GMO DESIGN AWARD』)も開催されたりしていますので、考える機会や時間はすごく多いですね。」
「全ての人に価値ある広告を届ける」
当社・ディマージシェアは『PlayAds byGMO』がリリースされた直後から開発・機能改良を支援してきた。現在の『PlayAds byGMO』は、最初期と比べて機能・体験ともに大幅に改良されている。
「はじめは、動画上でユーザーのコメントを収集する地点を1秒ごと人の手で設定していたんです。その設定を、ディマージシェアさんと組んで自動化することができて、一気にツールが進化したように感じました。それが、まだ始まったばかりの『PlayAds byGMO』事業の可能性を感じた瞬間でしたね。」
ディマージシェアを『PlayAds byGMO』の開発パートナーとして採用した理由には、開発能力に加えて、もう一つあったという。
「もちろん技術力があることは前提ですが、それ以上にGMOプレイアドがやりたいこと、実現したいミッションに共感してもらえたことが、ディマージシェアさんを選んだ最大の理由です。新しい事業というリスクも含めて取り組んでいただけているので、信頼できるパートナーだと感じています。」
GMOプレイアド社のミッションは「全ての人に価値ある広告を届ける」だ。『PlayAds byGMO』や『Depth X』も、この延長線上にある。
「正直なことを言えば、現在の広告には“うざい広告”が少なくないと思っています。✕ボタンがすごく小さいとか、コンテンツに集中しているタイミングで強制表示される動画広告とか……。本来は広告主のメッセージを届けるための手段が広告なのに、本来のあり方ではなくなってしまっている側面は否定できません。
我々のバリューは、生活者様に対しては“価値ある広告” “価値ある情報”としての広告を取り戻し、企業に対しては広告を通じた事業成長をもたらすこと、社会に対しては広告を通じて持続的な生産と消費を作っていくことだと思っています。」
15年以上にわたって広告業界でシステムを開発し、広告業界の変遷を間近で見てきた当社にとって、GMOプレイアド社のミッションは大いに共感できるものだった。あわせて当社は「収益化DX」を事業領域として、これまで数多くの企業の新規ビジネスや新たな分野への挑戦を、伴走して支援し続けてきた。それだけに、GMOプレイアド社の想いを深く理解していると自負している。
スピードに並走する開発パートナーとして
GMOプレイアド社を象徴するキーワードは ”スピード” だ。サービスを通じて提供する価値を筆頭に、日々のコミュニケーションを含めたあらゆる面でスピードを重視している。
「たとえば、前述の『Depth X』のアイデアは、もともとクライアント様とのお打ち合わせの最中に生まれたものでした。そのお打ち合わせが終わった瞬間にディマージシェアさんに連絡して、すぐにでも取り掛かれないか?と相談したところから始まっています。このスピード感が、当社にとっては何より重要なんです。」
GMOプレイアド社にとって「スピードがあること自体に価値がある」と有方氏は言う。広告・マーケティング業界は、顧客のニーズや技術トレンド、競合企業の動きなど、ありとあらゆる要素が高速で変化し続けている。そうした環境では、スピードに特化すること自体がビジネスとしての強みになるのだ。
「我々が今後さらに成長するために必要なものは、いま以上のスピードだと思っています。一日でも、一時間でも早く意思決定をして、システムやサービスに反映させていきたいです。このスピードを突き詰めていくことが、我々の競争優位性につながります。」
GMOプレイアド社では『PlayAds byGMO』の改良、新たなツール『Depth X』の開発など、多くの実現したい構想を抱えている。
「すべての人に価値ある広告を届ける」というミッションを実現するために、一層のスピードで成長を続ける同社のパートナーとして、ディマージシェアはおなじだけのスピードと熱量で支援していく。
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