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建設業からITサービス会社への事業転換:前編
建設会社だからこそのERPパッケージの開発

株式会社山上建設

  • 代表取締役
  • 山上卓也 様

関東エリアを中心に総合建設業を営む山上建設様。建設業界特有の課題をITで解決する同社の一大プロジェクトにディマージシェアが携わっている。今回は同社代表取締役社長の山上氏にお話を伺い、前編・後編の二回に分けて同社との取り組みを紹介する。

同じ悩みやトラブルを抱える工事会社さん、
これから抱えるであろう工事会社さんを
ITの力で支えたいんです。

同社は総合建設業を営み、施工管理をメインに活躍している。その一方で、建設業界向けのERPパッケージ(※)「ALL SHARE」を提供するITサービス会社の一面も持つ。

(※)ERP(Enterprise Resources Planning)とは、企業の持つ資源(総務、会計、人事、生産、在庫、購買、物流、販売)を最大限に活用し効率的な経営を目指す経営手法のこと。これを実現するための業務横断型ソフトウェアを「ERPパッケージ」や「ERPシステム」と呼ぶ。

「ALL SHARE」サービスページ:https://www.allshare.fun/

建設業界向けERPパッケージ「ALL SHARE」

ALL SHAREは建設業界に特化した、採算管理・利益構造の見える化・業務の効率化を手助けするシステムである。
工事案件一つ一つの粗利や入金・支払額などを自動計算し、全社的な経営状況を簡単に把握することができる。また、従来Excelで作成し、紙で管理している見積書や注文書・請求書など各種帳票の作成・管理をシステム上で完結させる。さらには、利用各社が過去に作成した見積書を基に、従来ブラックボックスになっている工事原価の平均値を算出する機能も搭載している。

山上建設自身が抱えていた悩みから思い立つ

総合建設業を営む同社がなぜERPパッケージを開発したのか。その背景には同社が抱えていたある二つの悩みがあった。「売上拡大が難しい」ことと「利益が上がらない」ということである。

・売上拡大が難しい

建設業界は、屋根工事や電気工事など29もの工種に分かれており、会社ごとにそれぞれ得意とする領域を持つ。売上の拡大を目指すには、単一工種だけでなく複数工種への参入が重要である。同社は足場工事会社として開業し、現在では17工種まで事業を拡大しているが、ここに至るまでの道のりは険しく、多くの時間を要したという。

「売上拡大のために工種を拡大しようというのはどの建設会社さんも考えることなのですが、各工種の工事原価はブラックボックスになっていて他工種への参入ハードルが高いんです。これって業界全体で見るともったいないなと思ったんですよね。」

建設業界は多重下請構造であり、他業界に比べ原価が非開示になりがちである。これが他工種への参入障壁となっている。

・利益が上がらない

もう一つの悩みは「利益が上がらないこと」。「一つ一つの工事案件、ひいては会社全体の利益構造を把握できていない『どんぶり勘定』が原因で、経営におけるボトルネックがわかっていなかった」と山上氏は当時を振り返る。

資材費や人件費など売上入金前の先行出費が多い建設業界で事業を安定して運営するには、自社の利益構造を理解し、運転資金がどの程度あるかを常に把握することが重要である。しかし現実には、こうした経営に関わる情報を把握できずに、赤字に陥る建設会社は少なくない。山上建設でも取引先の未払いといった金銭トラブルが発生していた。

また同社は、売上規模が1.5億円ほどに至るまで会社が成長するとそれまで順調に拡大してきた売上が頭打ちになり、利益率を改善する必要に迫られることに気づいた。「とにかく案件数をこなして売上を上げる」ことに、「利益率を改善したい」「業務効率化をはかりたい」という利益構造に関する課題が加わるのだ。

ただし、利益構造の把握は容易ではない。その理由は大きく2つある。

①採算意識が低い

そもそも業界全体で、案件単位・企業全体の原価や利益の内訳を把握することに対する意識が薄い。口約束の受発注や原価・利益を計算せずに仕事を引き受けるケースも多く、気づいたら資金繰りが厳しくなっていた…ということも珍しくない。

②紙での情報管理のため必要な時に参照しづらい

建設業界では見積書や発注書をはじめとした契約書類が多いにも関わらず、各種帳票の作成・管理を電子化している企業は少ない。原価や利益を把握しようにも、一つずつ書類を探し参照するには時間がかかり、業務の負荷は想像以上に大きい。

ERPパッケージの開発と建設会社がそれをやる意味

「弊社のような悩みやトラブルを抱えている会社さんやこれから抱えるであろう会社さんってたくさんいるんじゃないかと思ったんです。」

建設業界は9割以上が中小企業だ(※)。山上建設のように、事業拡大のための他工種参入に苦労していたり、利益構造の改善に現在頭を抱えたりしている企業、あるいは今後これら問題が顕在化してくると予測される企業は数えきれない。この問題を解決することは、今後の建設業界の盛り上がりにもつながる。

(※)令和4年の国土交通省発表の調査によると、中小企業基本法にて中小企業者とされる資本金3億円未満の法人数及び個人は、建設業許可業者全体の99.5%を占めているとされている。 参考:「建設業許可業者数調査の結果について」国土交通省不動産・建設経済事務局建設業課

そこで山上建設が構想したのは「売上拡大のための他工種への参入」と「利益構造の把握」を実現するための、全ての建設工種における工事案件の受発注から入金・支払いまでの業務を一貫して管理する仕組みだ。つまり、見積書や請求書など各種帳票を作成することで工事案件ごとの原価・利益の情報を自動で収集し、会社全体の売上・利益を把握しやすくすることと、ユーザーが登録した工事原価を基に工種ごとの工事原価の基準値を割り出すことの2つを実現するシステムの開発である。

そこで山上建設が構想したのは「売上拡大のための他工種への参入」と「利益構造の把握」を実現するための、全ての建設工種における工事案件の受発注から入金・支払いまでの業務を一貫して管理する仕組みだ。つまり、見積書や請求書など各種帳票を作成することで工事案件ごとの原価・利益の情報を自動で収集し、会社全体の売上・利益を把握しやすくすることと、ユーザーが登録した工事原価を基に工種ごとの工事原価の基準値を割り出すことの2つを実現するシステムの開発である。

また問題の解決には、ただシステムを開発するのではなく、実際にユーザーが活用できるように工夫することも重要だ。世に建設業向けと謳うシステムは数多くあるものの、そもそもシステムに馴染みの無い建設会社にとっては導入すること自体のハードルが高い。導入できたとしても、こうしたシステムの中には実際の業務に馴染む作りになっていないものが多く、利活用まで至ることは難しい。そんな彼らが使えるシステムを作るためには、例えば、現場面積を入力するだけで、従来は工事費用の内訳が細かく作成に手間がかかっていた見積書を自動で作成できるようにしたり、その見積書をもとにワンクリックで注文書を発行できるようにしたり、直感的に様々な操作ができるような設計を考えぬくことが必要不可欠であった。

「建設業を営む弊社だからこそ、業務に馴染むシステムを作ることができ、導入後の利活用も担当者目線でサポートできる。競合他社と差別化できる自信がありました。」

同じ悩みを抱えている、そしてこれから抱えるであろう建設業界の人たちの力になりたい̶̶。その強い想いから、「売上拡大のための他工種参入」「利益構造の把握」を支援するシステムを、当たり前に活用できる形で提供することを目指し、開発プロジェクトが始まった。このプロジェクトは同社にとって、事業転換への挑戦でもあった。

後編へ続く

会社名
株式会社山上建設
事業
  • 総合建設業

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