概要
- 大量かつ短期間で対応する必要がある住民税業務の改善を試みる
- 業務ノウハウや判断基準をAIに学習させ業務を自動化
- 人力での精度とほぼ変わらず、作業時間の大幅削減を実現
DXの動機・背景
東京都練馬区では、自治体が住民税額を通知する「税額通知書」の送付に多大な労力を費やしていた。毎年、給与支払報告書や確定申告書などの資料から生じる約7万件の不整合リストを職員が手作業で、かつ短期間で確認・修正しており、この大規模な作業は職員にとって大きな負担となっていた。また、豊富な知識と経験を必要とするこの作業は、ベテラン職員の退職によるノウハウの喪失リスクも抱えていた。
経過・対応・取組内容
この課題に対処するため、練馬区は富士通株式会社と共同でAI技術を住民税業務に導入する共同実証を開始した。不整合の原因や修正要否の基準などのノウハウをAIに学習させ、修正作業の自動化を可能にした。またベテラン職員の知見をAIに蓄積させることで、ノウハウの継承を目指している。
得られた成果
実証実験の結果、AIの判断と職員の判断が一致した確率は98.4%であり、人の目で判断したときと遜色ない精度を達成することができた。また、AIを活用することで、処理時間は53.1%と大きく削減され、職員の作業負担が軽減されたことが報告されている。
この実証実験の結果を受け、中央区の税額計算業務でも同様の効果が得られるか検証が実施されている。
編集部コメント
2030年代には、いわゆる“団塊ジュニア世代”が退職期に入ることで、言語化されていない業務知識(「勘」や「経験」)の喪失が懸念されています。本事例のように、業務知識やノウハウをシステム化し、継承する取り組みは重要度を増していると言えます。