概要
- 運送効率の向上、事業拡大のためブロックチェーン技術を活用
- ペーパーレス化や取引企業の情報集約など全面的な改革
DXの動機・背景
株式会社ホームロジスティクスは、家具・インテリアの企画・販売を行う株式会社ニトリの物流部門を分社化して設立された。近年OMOへの注力によってEC部門が急成長しているニトリの物流に加えて、他企業の物流も請け負っており、その配送件数は年間810万を超えるという。ニトリでは自社でトラックを保有しておらず、多数の提携先に委託している。つまり、多数のステークホルダーが存在するということだ。車両の確保と効率的な利用が事業において重要な要素である。また、運送の担い手や車両の不足という迫りくる社会問題にも対処する必要がある。
経過・対応・取組内容
まず、受発注に用いられている紙伝票を撤廃するためにブロックチェーンを活用した。数多くの運送会社と電話かFAXで受発注を行っていたことで、紛失や転記ミスが課題であった。これを解消するために、多数のブロックで情報の整合を認証するブロックチェーンの特徴を活かした、受発注に関する情報を齟齬なく管理できる仕組みを採用した。
また、運送会社ごとの情報管理にもブロックチェーンは活用されている。大型家具の配送に加え、室内への配置や組み立てまでできることが強みであるホームロジスティクスでは、提携運送会社にどのような種類の車両があるのか、どのようなスキルを持つ担当者が所属しているかを把握する必要がある。運送会社ごとに車両データや担当者スキルをブロックチェーンに登録してもらうことで、ステークホルダーが共通の情報にアクセスすることができ、かつデータが改ざんされる可能性の低いセキュアな環境を構築した。各社の保有する車両やスキルをデータ化することで、効率的な人員配置を目指す。
更に、履歴の追跡に強いブロックチェーンの特性を活かし、車両の作業内容や現在地を追跡することで空荷率を減少させ、積載率の向上を狙う。
得られた成果
同社の売上高はニトリグループの内部取引がほとんどを占める。本システムの活用によって外部企業からの運送請負を拡大し、売上高を更に伸ばす予定だ。将来的には、委託先である中小企業を効率的に取りまとめて、運送以外のサービスの可能性も模索するという。
編集部コメント
2024年問題も迫る物流業界は、大企業から中小・零細企業までが緻密に関連しあって成立している複雑な構造になっています。大手を中心に標準化やデジタル化への取り組みは進んでいますが、本事例ではブロックチェーンを全面的に活用することで課題を解決しようとしています。