杜氏の経験をAIで再現する試み、日本酒製造にAIを導入する実証実験

企業名

株式市場

非上場

創業

1902年

従業員数

資本金

売上高

主な事業

清酒・リキュールの製造
清酒・リキュールの販売(卸・小売「通信販売を含む」)

※2022年12月時点/公式ホームページより引用

概要

  • 酒米を洗った後に水に浸す「浸漬」にAIを活用する実証実験
  • 職人の判断を画像認識やその他データを蓄積することで再現を目指す

DXの動機・背景

製造業における職人の技術継承は様々な分野で大きな課題である。酒造りにおいても、世代間の技術継承には各酒造が頭を悩ませている。酒造りにおいては監督を行う“杜氏”の経験と勘によって味が支えられており、杜氏が引退することはすなわち品質が変わってしまうことを意味する。

経過・対応・取組内容

株式会社南部美人では、こうした技術継承の断絶による品質の変化を防ぐためにAIの活用を模索し、実証実験を開始した。AIを利用したのは”浸漬”と呼ばれる、原料となる米を洗浄した後に水を吸わせる工程だ。米に含まれる水分量のわずかな差で出来が大きく異なる上にやり直しが効かないため、浸漬するほんの数秒の違いを杜氏が判断している。この浸漬で米がどのように変化しているのかを画像として認識する。膨張や割れ具合、色味に加え、温度や米の種類といった様々なデータをディープラーニングによって学習、データを蓄積した。

得られた成果

現時点ではAIを今すぐ職人に置き換えるのではなく、職人の作業を補助する役割を目指して試行錯誤が行われている。実証実験において収集されたデータは、今後南部美人のみならず広く共有することで、業界全体の活性化にも活用できるのではと期待されている。またAIによる酒造の個性喪失を懸念する声もあるものの、酒蔵によって目指すべき浸漬の度合いも異なるため、独自性への影響は小さいと見られている。

編集部コメント

職人の経験や技術継承の途絶は製造業の大きな課題です。こうした経験や勘は言語化・数値化されているものではなく、何をもって判断しているのかを可視化することから始める必要があります。様々なデータを大量に収集し、職人が判断する条件を再現することは容易ではありませんが、将来起こりうる断絶への対策としてのデータの蓄積は早期に取り組んでおくことが望ましいといえます。

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