概要
- 山岳遭難事例の多くは登山道を誤ったことによるもの
- モバイル通信ができない山中でも位置が判別できる地図アプリを開発
- 多くのユーザーデータを活用し、登山の安全に貢献
DXの動機・背景
日本では年間およそ3000人が山岳で遭難していて、その多くが道に迷ったことが原因だ。山中では電波が届かず、市街地で一般的に使われるスマホの地図アプリは役に立たない。そのうえ、登山道は必ずしも判別しやすく整備された道とは限らず、季節によっては一見して道とわからない箇所も少なくない。現・株式会社ヤマップ代表は、スマートフォンのGPS機能に着目し、手軽かつ安全に登山を楽しむことをサポートするアプリの開発に着手した。
経過・対応・取組内容
株式会社ヤマップは、電波が届かない山の中でも登山を安全に楽しめるアプリ「YAMAP」を、2013年にリリースした。事前に地図をダウンロードし、スマートフォンに搭載されているGPS機能を活用することで、現在地が一目でわかるアプリだ。
「YAMAP」には地図アプリに加えて、登山ログやコミュニティアプリとしての側面もある。道中で撮影した写真や、移動情報などを登録することで、登山の記録を蓄積させていく。ダウンロードされた地図の情報や、登山記録のテキスト解析結果から、人気の登山道を把握したり、おすすめ表示に反映させたりする。また、そうした登山日記をユーザー同士で閲覧し、コミュニケーションを取ることも可能だ。
得られた成果
サービス開始から10年でダウンロード数は380万件となり、同様のサービス内ではトップシェアを誇る。本サービスは、DX大賞実行委員会が主催、国内のDX推進プロジェクトを表彰する「日本DX大賞2023」において、「SX・GX部門」の大賞を受賞した。行動データからルート上の迷いやすい箇所を判別することで、標識の設置箇所を提案したり、ユーザー同士がすれ違うことでサーバーに送信される位置情報をもとに、もし遭難した場合でも捜索範囲を絞り込めるようにする仕組みを構築したりと、登山の安全を守るアプリへと進化している。
編集部コメント
登山道は平面ではなく立体の、整備されているとは限らない道です。場合によっては十分な情報が存在しなかったり、判別するのが難しかったりするものです。スマートフォンでは、モバイル通信が届かないエリアでもGPSが動作していたり、端末間でのBluetooth通信が機能していたりします。こうした端末の特性が、現在のYAMAPの誕生に繋がっています。
また、コミュニティとして情報を共有し、多くのユーザーの拠り所となることで、不確実な”自然”を人の軌跡からデータ化している点も見逃せません。
参考・出典
- https://yamap.com/
- 株式会社ヤマップ / YAMAP | ヤマップ 日本DX大賞2023 SX・GX部門で大賞受賞
- No.1登山アプリ「YAMAP」春山慶彦が、山と地方にこだわる理由と決意|Qualities
- 登山 No.1 アプリ『YAMAP』代表取締役・春山氏インタビュー。都市で暮らす人と自然を繋げたい -Appliv TOPICS
- 感情・行動データが理由 「ヤマップ」がファンを魅了する工夫:日経クロストレンド
- 電波なくても使える登山地図アプリ「YAMAP」、コロプラなどから1.7億円を調達 – CNET Japan
- 登山者コミュニティを通じた道迷い遭難ゼロを目指す株式会社ヤマップのDX事例|日本DX大賞2023 – 経革広場
- 登山者向け地図情報アプリ「YAMAP」頂点380万DL…目標は「豊かな社会の実現」:地域ニュース : 読売新聞