概要
- 工場全体のデジタル化で業務効率化と確実な技術伝承を目指す
- ExcelやAI、IoT技術を活用した業務効率化システムの開発
- 従業員の意識改革による売上増と金型製造以外の事業創出を実現
DXの動機・背景
株式会社IBUKIは、⾦型の設計・製造を中⼼に、プラスチック成形品の製造、⾦型への微細な特殊加⼯などを提供している。工場での作業をデジタル化することで、業務の効率化と次世代への確実な技術伝承を目指している。
同社では赤字が続いており、業務の立て直しが急務であった。また、職人の技術は“勘と経験”の比重が大きい。正確な伝承をするには長い時間が必要となり、若手職人の育成がなかなか進まなかった。
そこで同社では、コンサルティング会社の資本参加を期にAIを活用した通常業務の効率化と、スムーズな技術伝承を実現させる取り組みを行った。
経過・対応・取組内容
同社でのデジタル化は、従業員が受け入れやすくなるように、身近なところから順を追って進められた。
まず、勤怠管理や材料在庫管理・簡単なチェックなどについて、身近なソフトであるExcelを使ってシステムを開発し、導入するところからスタートした。その後、知識や経験が必要になる見積もりや不良品判定、工具の摩耗判定について、熟練者の作業をAIに学習させることで、同業務の支援システムを開発した。
技術伝承においては、センサーを搭載した最新のIoT金型を製作。熟練者の技術をセンサーで測定・数値化することで、目には見えない金型の内部についても正確に把握できるようになった。
得られた成果
段階を踏んでデジタル化を進めたことで、従業員のシステム・ツールに対する抵抗も緩和され、前向きにとらえる風潮が生まれた。業務全般に対してもポジティブな雰囲気が生まれ、デジタル化と意識改革を進めるうちに売上も大きく向上した。
また、勤怠管理・材料在庫管理・簡単なチェックなどの事務的業務の効率を上げるシステムや、見積もり・不良品判定・工具の摩耗判定などの製作に関わる支援システムの開発により、業務の効率化だけでなく、工場全体のデジタル化に成功。後にその経験とノウハウをサービス化して外販するという、金型製造とは別事業の創出にも結びついた。
編集部コメント
特に製造業では、優れた技術やノウハウほど次世代への継承が難しく、多くの企業で課題となっています。IoTやAIを駆使し、熟練の技術をデータとして可視化・再現することは、技術継承の断絶を防ぐことに繋がります。