ITを活用したマグロ養殖、デジタルを活用した新しい水産業

企業名

株式市場

東証プライム

創業

2003年

従業員数

2,579人(単体)

資本金

1603億3,900万円

売上高

主な事業

自動車、航空産業・交通プロジェクト、インフラ・ヘルスケア、金属・資源・リサイクル、化学、生活産業・アグリビジネス、リテール・コンシューマーサービスの7つの本部体制で、国内外での多様な製品の製造・販売や輸出入、サービスの提供、各種事業投資などをグローバルに多角的に展開

※2023年3月時点/公式ホームページより引用

概要

  • 自然相手のマグロ養殖ではトラブルの原因特定が困難だった
  • IoTを駆使した給餌の最適化とディープラーニング技術による個体数カウントの自動化
  • アナログとデジタルの融合によって問題を解決するモデルケースを目指す

DXの動機・背景

双日株式会社が中心となって立ち上げた双日ツナファーム鷹島株式会社ではマグロの養殖を行っている。買い付けたマグロの稚魚を、海上の生簀の中で約3年かけて育成し、水揚げ、出荷する。給餌の量や方法、タイミングは経験則に基づいており、生簀内の個体数はダイバーの水中撮影動画をもとに把握していた。自然が相手のためアクシデントに見舞われやすく、度々起こる問題の原因特定は困難を極める。
そこで、双日株式会社では、大きく分けて2つのデジタル技術の活用を決断した。

経過・対応・取組内容

まず行ったのが、IoT技術を活用した給餌の最適化だ。センサーと可視化アプリケーションを導入し、生簀内のセンサーで給餌量やエサの質、水温などのデータを取得。AIを駆使してデータの相関性・関連性の分析を行い、マグロ育成にとって最適な状態での給餌を目指している。
次に、個体数の自動カウントを実施。ディープラーニングを活用し、画像解析技術で自動的に個体数を把握できるようにした。海水中を高速で泳ぐマグロの姿を確実に捉えるため、高性能水中カメラなどを利用し、バックスクリーンなどで解析に適した画像を撮影。学習データの整備や映像の抽出、独自のデータ処理を行い、正確なカウントを目指している。

得られた成果

これらのセンサリング・IoT技術の活用により、作業負荷軽減と正確性の向上が期待できる。マグロ養殖のノウハウが可視化されると、水産養殖事業そのもののコスト削減と効率化につながる他、安定的な収益が見込まれ、漁師を取り巻く環境の改善も期待される。
本件は自然を相手にする産業にデジタル技術を持ち込み、アナログとデジタルを融合させ課題を解決する試みの先駆けとして注目されている。積極的なデジタル化と安全性の両立が、世界に注目される養殖本マグロを生みだしている。

編集部コメント

自然という不確実性に対して勘と経験を武器とする水産業を定量化・データ化することで、自動化・最適化を目指す事例です。
総合商社である双日では、水産業界が抱える様々な課題の解決にデジタル技術で挑んでいます。例えば、天然冷凍マグロの品質判定技術「TUNA SCOPE」を他社と共同開発し、熟練の目利きが個体毎に検品し、品質選別していた技術の自動化を実現したこともその一例です。こうした取り組みは総合商社の強みと発想ならではとも言えますが、一見不確実な“自然”をデータ化する試みは、多くの産業・事業で参考になる観点です。

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