AIが運行時間を計算するオンデマンド乗り合い送迎サービス

企業名

株式市場

東証プライム

創業

2022年

従業員数

36,489人(2022年3月31日現在/単独)

資本金

450億円

売上高

主な事業

自動車部品、エネルギー・住生活関連製品の製造販売

※2022年12月時点/公式ホームページより引用

概要

  • バスとタクシーの中間であるオンデマンド型乗り合い送迎サービス
  • 地方をはじめとした「交通難民」に移動手段を提供、停留所は民間施設や店舗
  • AIが季節や天候、地域によって異なる現実的な走行速度を計算

DXの動機・背景

地方、特に過疎地域での「交通難民」が問題になっている。不採算による公共交通機関の路線減少、商業施設の市街地集中、あるいは高齢者の免許返納促進によって、日々の交通に不便をきたしている人々を指す。こうした交通の問題に対して、近年では自治体主導で「AIオンデマンド交通」の試みが盛んになっている。フレキシブルに運行する、タクシーとバスの中間のようなサービスだが、どのような課題をどうやって解消するのか…という計画や目的設計の難しさや、広く公平なサービスを提供する自治体の方針上、採算が合わずに難航するケースも少なくない。

経過・対応・取組内容

こうした試行錯誤が続く「AIオンデマンド交通」の分野で、自動車部品メーカーである株式会社アイシンは、乗り合い送迎サービス「チョイソコ」を提供することで交通難民問題の解消を目指す。決まった路線を常時運行するのではなく、予約に応じて運行するオンデマンド型の交通機関だ。「エリアスポンサー」と呼ばれる地域の医療機関や店舗に停留所を設け、予約に応じて最適な乗り合わせや経路などを計算し送迎する。走行速度の計算にAIを活用し、適切な所要時間の算出をしている。全国一律で所要時間を算出するカーナビとは異なり、例えば真夏の炎天下で高齢者を待たせることがないように地域や季節の実態に即した時間の算出ができる点が特徴だ。

得られた成果

AIオンデマンド交通の課題のひとつとして、採算性が挙げられる。「チョイソコ」では、利用者からの乗車料金と民間の「エリアスポンサー」による協賛金を両立することで持続可能な採算性を実現している。利用者の中心である高齢者には外出機会の創出よって心身の健康増進に貢献し、エリアスポンサーには新規顧客の開拓や固定客の安定的な来店機会を提供することに繋がっている。

編集部コメント

自動車業界では近年「CASE」が着目されています。「CASE」は、Connected(コネクテッド)・Autonomous(自動運転)・Shared&Services(シェアリング/サービス)・Electric(電気自動車)の頭文字で、近年のCO2規制を踏まえた自動車業界の方向性を示すキーワードです。本事例は「AIオンデマンド交通」という分野ですが、こうした大きなトレンドのひとつとして捉えることも可能です。AIをルート検索に利用する例は他事例でも見られますが、本事例では実際的な運行時間の算出に利用している点が特徴的です。高齢者というターゲット層や利用者数を考慮し、運行時間の計算にAIを採用するこが最適だと判断した、とのことです。

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