概要
- 近年市場規模が縮小していく百貨店がニューリテール戦略により再び活気を取り戻す
- 売上倍増につながったアプリ開発とライブコマース販売
- オンライン化によって24時間営業を実現し、従業員の負担を軽減
DXの動機・背景
銀泰百貨は、中国杭州市発の老舗の大型百貨店であり、主力商品は洋服や化粧品といった昔ながらの百貨店だ。近年、日本での百貨店市場規模は縮小傾向にあるが、それは中国でも同様。高級品を定価で販売する百貨店よりもECで購入するほうが安いからだ。
銀泰百貨は、2017年に中国のテクノロジー企業アリババ株式会社の子会社となったことを機に、オンラインとオフラインを融合させた新しい消費体験「ニューリテール戦略」を推進。デジタル化を進め、オンラインでの販売強化に取り組んだ。
経過・対応・取組内容
同社の取り組みは大きく分けて2つある。まずは。独自開発したアプリ「喵街」(ミャオジェー)の導入によって、いつでもどこでも銀泰百貨の商品が購入できるオンライン販売の仕組みを構築。物流ロボットの導入などにより、注文後10km以内の地域には2時間で、10~30kmの地域には当日中に商品が到着する物流を整備した。
もうひとつは、オンライン販売とライブ配信を組み合わせたライブコマース販売。消費者とリアルタイムで双方向の意思疎通ができ、一度に多くの人に対して接客が可能となった。コロナ禍で銀泰百貨店の全ての店舗が営業を停止したが、販売員がライブコマース販売を開始すると1日平均1.5万人が視聴し、1日の売上高は2週間分に相当する。
得られた成果
アプリの活用によって、リアル店舗が閉店してもオンラインで24時間購入可能となり、眠らないデパートとなった。店舗がない地域の顧客も取り込めるようになったことで売上は増進。持ち帰るのが大変な重量のある商品も、オンラインで注文すれば配達してもらえるので購入へのハードルが下がった。
オンライン会員は1,000万人を超え、5年でEC化比率を50%にする目標を掲げている。ECへの注力によって売上が伸びるだけではなく、リピート買いする顧客はECから注文し、実際に販売員のアドバイスが欲しい顧客は店舗に来店するので、従業員の負担軽減にも繋がった。
編集部コメント
コロナ禍によって、外出の機会は減り、ECサイトの需要は拡大しました。多くの百貨店が売上に伸び悩むなか、同社のようにデジタル化を進め、ライブ配信を利用したトレンドの波にのったことで、一気に経営が上向きになった事例です。同じ業界だけでなく他業種にとっても参考になる好例といえるでしょう。