概要
- 不動産業界に根付く紙文化を脱却し、業務の効率化を目指す
- CRMの活用により業務時間削減と売上増加を達成
- 蓄積したノウハウを地域企業のコンサルティングに活用
DXの動機・背景
株式会社福徳不動産は、長崎・福岡県を中心に不動産業を営んでいる。あらゆる人々が共生できる住まいと街づくりを理念とし、不動産仲介に限らず幅広い事業を展開している。
しかし、かつては支店同士で売上・契約進捗管理が連携できておらず、データの収集や打ち込みを行うスタッフの負担の大きさが問題化していた。
こうした問題に対し、同社では数年来デジタル活用について準備をしていた。元より不動産業は紙文化が根強いことなどから、漫然とシステムを導入しても、従業員の反発を呼んだり、期待と異なるものが完成して結局使われなくなったりするリスクを懸念して、入念な準備を行っていたのだ。
経過・対応・取組内容
バックエンド業務のデジタル化に先立ち、業務フローを整理。更に、SEを内製化して自社で開発を行える素地を整えた。そのうえで「自社の効率化」「地域企業をコンサルして効率化」「長崎の生産性アップ」「地域活性化」という4段階の目標を設定した。
その後、満を持して不動産会社の営業業務に特化した顧客関係管理(CRM)システムと、社内システムを一元化するためのCRMを導入した。新システムに対する社内の抵抗感に対しては、導入時期の事前告知や各店舗のスタッフで組織したDX推進チームが教育を行うことで乗り越えた。
得られた成果
CRMの導入により、引っ越しシーズンである2〜4月の繁忙期に1人あたり約460時間業務時間を削減。導入前に比べて契約件数で約1.5倍、売上で約1.75倍の増加を2年連続で記録した。
システム化とその準備を通して蓄積したノウハウを、地域企業活性化のためのコンサルティングに活用できていることも成果といえる。
システム構築の過程で、CRMやロボットによる業務自動化(RPA)、ネットワークセキュリティなど、幅広い技術分野に対応できるようになり、事業を拡大するきっかけとなった。結果として、他社へのコンサル開始から約10カ月で約3,000万円の売上を達成した。
編集部コメント
同社の代表は、新システム導入時において準備こそが重要と考えており、本件に関して「計画から導入準備だけで2年は要したが、売上に対する経常利益率を5%落としてIT分野に投資してでもやった」と語っています。DXの達成には、明確な意思を持った推進力と、入念かつ慎重な計画性の両方が求められると実感する事例です。