概要
- 事業成長に伴う事務作業の負荷増大
- システムやツールを活用して業務とコミュニケーションの改善
- 残業時間削減と利益率向上、離職率低下を達成
DXの動機・背景
いまいパン合同会社は沖縄県で製パン業を営み、2つの店舗と売店を構えている。創業後、町のパン屋さんとして人気を集めたことで事業規模が拡大し、2019年に合同会社へと法人化した。
しかし、近年の製パン業界は材料費・人件費の高騰、競合店との競争激化、離職率の増加など、課題が山積している。加えて、事業拡大した頃はスタッフの勤怠時間集計や給与計算が大きな課題だった。30人近くいるスタッフのデータを、経営者かつ現役のパン・ケーキ職人である夫妻が深夜まで手入力で作業していたため負担は大きく、過労によるミスも起きやすかった。
こうした事務作業の効率を改善するために、「IT導入補助金」を活用しながら複数のシステムを導入した。
経過・対応・取組内容
まず、勤怠管理システムを導入。スタッフの勤怠データをワンタッチでクラウドに蓄積し、Excelで出力することで効率化を図る。
次に、会計システムにより給与計算に関わる改定の反映を自動化。また、給与明細をペーパーレス化し、クラウド上のデータをスマホやパソコンから閲覧・印刷できるようにした。
会計システムと連動させながら、POSレジアプリも活用。売上データの収集とABC分析を行い、新商品開発や値上げの際は販売数上位8割に属するAランク商品を基準に検討するスタイルに変更した。
さらに、業務連絡時間帯を決めたうえでメッセージアプリを導入。シフト伝達やスタッフ間コミュニケーションの円滑化を促進した。
得られた成果
勤怠管理システムと会計システムを導入したことで、残業時間を平均2時間程度削減できた。
会計システムとPOSレジアプリの連携により、全店舗で商品の緻密な売上データに基づいたABC分析が可能となり、利益率の改善と機会損失の軽減に成功。廃棄商品も10分の1にまで削減した。
コミュニケーションツールの導入においても、狙いどおり業務連絡やスタッフ間コミュニケーションが円滑になり、離職率が低下。これらの取り組みが総務省に評価され、有用な小売業のDX事例として2021年に「沖縄総合通信事務所長賞」を受賞した。
編集部コメント
ベーカリーは薄利多売のビジネスだと言われています。そうした場合、人員を拡大しても売上に対して利益が伴わないことが往々にして生じます。人員増加に伴う事務作業の効率や、生産性が向上することで、人員の規模に見合う利益が出せるようになる、という事例です。