概要
- 伝統工芸・熊野筆の検品工程を自動化
- 不良品検知ツールを導入し、不良品の判定精度90%を実現
DXの動機・背景
株式会社晃祐堂は、100年以上の時をかけて継承されてきた伝統工芸である熊野筆の製造を営んでいる。同社の主力商品は、国内はもとより海外からの注文も多い化粧筆だ。その製造における検品工程は職人がひとつひとつ目で見て行っている。筆の穂先は素材になる動物の毛の配分によっても良品とされる基準が異なり、また極めて微細な差異で良・不良が分かれる繊細な作業だ。一人前の職人を育てるためには相応の時間と労力を費やす必要がある。
経過・対応・取組内容
同社は外部パートナーと連携し、検品工程をAIで自動化する試みを行った。プロトタイプを作成してデータ取得方法とアルゴリズムを策定した後に、良品の筆のデータを、画像数にして5,000枚を超える数を学習させた、完成させた。現場の筆職人が使いやすいように、わかりやすい判定結果の表示画面や、機器に不具合が生じても電源の入れ直しでリセットできるなど、使いやすさにも配慮している。
得られた成果
現在は90%ほどの精度で不良品を判別可能。ただし分析に費やす時間は数十秒であり、職人が検品するよりも時間を要しているため、より実用的な仕組みを目指して改良を続けている。また同社では良品の状態を数値化することで職人技術の再現性を高め、職人の育成に繋がると考えている。
編集部コメント
化粧筆の検品は、使用される動物の毛の配合比率や種類を加味して職人が判定する、非常に繊細な作業です。人間が行う作業は極めて繊細な感覚によって成立しているため、一朝一夕に自動化することは困難ですが、こうした試みを早期から重ねていくことが将来的な資産になっていきます。