概要
- ベッドに敷いたマットで尿と便を検知する排泄ケアシステムを開発
- 排泄を検知するとアプリや受信機に通知、巡回する順序も提案
- 排泄記録を蓄積しパターンを分析、データに基づく定時交換に繋げる
DXの動機・背景
介護現場では排泄介助に非常に多くの時間を費やしている。利用者1人あたり1日6~8回ほど排泄の確認が必要だが、うち2、3割は空振りになるという。確認のタイミングが遅れ排泄物が漏れてしまうと利用者のストレスとなり、シーツや服の交換作業が発生するリスクがあるので確認作業の頻度は減らすことができず、介護士にとっても負担が大きい。介護現場の「おむつを開けずに排泄状況を確認したい」という要望から開発がスタートした。
経過・対応・取組内容
においで尿と便を検知する排泄ケアシステム「ヘルプパッド(Helppad)」を、パラマウントベッド株式会社と共同開発した。利用者が装着するのではなく、ベッドに敷くことで極力不快感を与えないようになっている点が大きな特徴だ。このセンサーが埋め込まれた専用シートをベッドの上に敷くことで排泄を検知、尿と便を検知しアプリや受信機に通知をすることで、おむつの中を確認することなく介護士が排泄を把握できる。また排泄の記録を自動的に蓄積することで利用者ごとの排泄パターン表に表示する。データが蓄積することで介護士に部屋に行く順序を提案したり、都度の確認ではなく定時で交換したりする運用も可能になるとのことだ。
得られた成果
排泄介助を高負荷にしている要因のひとつが、予測が難しく常に介護士が気に留めていなければならないことだ。センシングにより自動で記録され、利用者ごとのパターンが可視化されれば、こうした精神的負担も大幅に解消が期待できる。「ヘルプパッド(Helppad)」を利用する全国の施設のデータが集まればより高精度な予測・検知も可能になるとのことだ。排泄のタイミングが把握できるようになれば、利用者の入浴や食事のスケジュールも円滑に組成できるので、生活全体の充実にも繋がる。
編集部コメント
介護現場において排泄介助は特に利用者の尊厳に関わる、介護士にとっても非常に気を使う業務です。また利用者それぞれで傾向は異なり、長く接した介護士でなければ把握できないことも少なくありません。そうしたデリケートかつ属人性の高い分野には、本事例の目指すようなビッグデータによる予測は期待できるアプローチと言えるでしょう。