概要
- 紙媒体でのデータ記録時間を削減しIT導入による介護士の業務負担軽減
- 介護現場の声を取り入れたアプリの開発に成功し同業他社へ販売
DXの動機・背景
さくらCSホールディングス株式会社は札幌市を中心に、介護事業や人材業、教育研修サービスを営んでいる。同社では介護業界全体の課題である、慢性的な人材不足解消を目指している。
しかし、紙媒体で利用者の体調などデータを記録する作業が多く、平均して介護士1人あたり約1時間~1時間半の作業時間が発生していた。内容が重複することもあり、事務所内でのデータ管理が煩雑になっていることも介護職員の負担となっていた。
そこで同社では業務負担の軽減を目指し、デジタル技術の活用を決断した。
経過・対応・取組内容
さくらCSホールディングス株式会社は介護保険法により、介護記録を7年間保管することが定められている。紙媒体でのデータ記録では作業時間がかかる上に、記録の活用も難しく改善の必要があった。
問題を解決するためクラウドサービスを探したがコストと機能面で適したサービスが見つからず、同社は記録作業を効率化するため、システムとアプリを自社開発する。
販社であった傘下の日本KAIGOソフトを開発会社に転換させて開発部隊を置き、外部の開発者の起用や介護現場の声を取り入れながら開発を進めた。
得られた成果
介護現場から生まれた「ケアビューアー」導入により、介護記録の作成に隙間時間ができた。紙記録に費やしていた5400時間のうち85%が削減され、浮いた時間を有効活用しケアの充実に充てることが可能。紙代やコピー費用もなくなったため、年間300万円相当の経費削減にもつながった。
5か国語に対応しているため、各個人が言語を選んで使用することが可能となり、言語の違いや手書きで読めないなどの問題も解消された。
同社内での利用だけでなく、同業他社へのアプリ販売も行っており、介護業界全体の生産性向上を実現した。
編集部コメント
本件の成功には介護現場の声や外部開発者の意見を反映し、自社アプリの開発を行ったことが大きく影響しています。本件は単純な紙をデータに置き換えるという範疇ではなく、業務のボトルネックを解決したという枠組みで考えるべき事例です。