概要
- 新製品開発時に参考とするレシピ検索の効率化がコスト削減に繋がる
- AIを活用したレシピ検索システムを開発
- 年間300万程度の試作品開発コスト削減の見込み
DXの動機・背景
オタフクソース株式会社は、ソースをはじめ液体調味料の製造・販売を行っている。お好み焼き店などの飲食店や、スーパーマーケットなどで使用する業務用調味料の開発も行っており、顧客への提案数は年間で1500件以上にのぼる。製品の新規開発にあたり、目標となる味のサンプルがある場合は、まず、含有成分を分析し測定する理化学分析や、五感を用いて特性や品質を判定する官能評価を行う。その後、既存製品や過去の試作品など、1万5千件以上に及ぶレシピの中からサンプルの味に近いレシピを探す。そのレシピを基準として試作を繰り返し、ようやく製品が完成する。試作回数を減らすことが製品開発コストの削減につながるため、基準となる適切なレシピを短期間で探し出すことが重要だが、膨大なレシピ数ゆえに、検索の早さや的確さは、担当者の熟練度に大きく影響を受けていた。
経過・対応・取組内容
オタフクソース株式会社はIHI株式会社と共同で、新製品開発時に基準となるレシピを抽出する検索システム「AIRS(エアーズ)」を開発した。理化学分析値や味や風味などの特徴を示すキーワードに加え、光の波長を用いて物質を判別する分光スペクトル計測方法により取得したデータをAIが学習し、目標の味に近いレシピを抽出する。
得られた成果
従来のシステムでのレシピ検索は、キーワードや理化学分析値で検索していたので、検索結果を一つずつ確認することが必要だった。AIRSでは分光スペクトル計測結果も加わり、AIが総合的に判断した上で類似度の高いレシピ順に検索結果を表示するので、検索性が大きく改善された。「検索結果の精度が上がり、検索結果に漏れがなくなった」という担当者の声もある。オタフクソース株式会社の見込みによると、AIRSにより適正なレシピを検索できることで試作回数が減り、試作品開発のコストを年間300万円程度削減できるとされている。
編集部コメント
創業100年の中で蓄積された資産を活用しやすくするために、デジタル技術を活用した事例です。分光スペクトル計測など一般的には馴染みの無いキーワードもありますが、大量のデータから条件に応じて適切なものを判断して抽出する仕組みを作る、という観点では業界問わず参考にできる取り組みです。