概要
- 商品の需要予測は担当者の経験・ノウハウに依存していた
- AIを活用した需要予測システムを開発し、データを学習させる
- 従来と比べて約20%高い精度での受給予測を可能にする
DXの動機・背景
大手ビールメーカーであるサッポロビール株式会社は、中期経営計画において「コア事業における収益力強化」を目指し、データやデジタル技術の活用による「スマートサプライチェーン」の実現に取り組んでいる。
この取り組みのなかで重要な位置づけとされているのが、需要予測業務の高度化だ。従来の需要予測業務は、担当者の経験に依存していた。通常、およそ4か月先の需要予測を行い、例年の実績やプロモーション状況を見ながら商品の出荷量を調整していくが、新商品の場合は、担当者の経験や勘に頼らざるをえない。こうした属人化を解決し、変化する市場ニーズに迅速かつ柔軟に対応することが、重要な課題になっていた。
経過・対応・取組内容
サッポロビールは日鉄ソリューションズと協力し、AI需要予測システムを導入した。このシステムは、機械学習プラットフォーム「DataRobot」を採用しており、約6か月間で高精度の予測モデルを構築することができた。それまでは個々の担当者に蓄積されていた、出荷日や出荷場所・出荷量などの実績データや、判断のポイントを考慮して開発されている。
得られた成果
サッポロビールは、まず本社工場におけるビールなどの受給量を対象に、同システムの検証を行った。約6か月に40アイテムほどで受給予測の検証を行い、AIの学習データを増やし、精度の向上を図った。その結果、AIの予測精度は人の予測精度よりも約20%向上し、これを受けて本格運用を決定した。
編集部コメント
DXの推進によるサプライチェーンの最適化では、大量のデータを元に予測を行うという点でAIが特に活きるシーンです。本事例では、検証期間にAIを“育成”したことも注目すべき点です。これにより、担当者の暗黙知やセンスがAIに落とし込まれ、可視化することを可能にしました。更に言えば、この検証期間は担当者がAIと協働するための、いわば助走の役割を果たしています。人をAIに置き換えるだけでなく、より高度なAIにするために協調していくためには、こうした助走期間も重要でしょう。