概要
- トップシェアから更に成長するためのビジョンの実現に向けた一連のDX戦略
- 個の能力と知識を組織として蓄積、再現するための基幹システム
- 成功体験が従業員のデジタルスキル習得を促進するモチベーションに
DXの動機・背景
株式会社フジワラテクノアートは岡山県に構える、およそ90年続く醸造機械のトップメーカーだ。日本酒や醤油のような醸造食品を製造する設備の受注生産を行っている。
同社では「開発ビジョン2050」を策定し、シェアに安住せず更なる価値を提供する企業になることを目指している。その実現のためには個の知識/経験を組織として共有し、現場対応力に依存するのではなく仕組み化によって開発力を高める体制作りのためのデジタル化が必要だった。
経過・対応・取組内容
同社の取り組みは全域に渡るドラスティックなものだ。着手にあたり、まずは業務を大判の紙に書き出し、課題を可視化した後に整理と優先付を行ったという。優先とされたものの一つが生産管理システムだ。当時利用されていたシステムは、同社向けに独自に作られた販売管理システムで、アクセス権設定やデータの利活用に難があった。また個別受注生産というビジネス特性上、担当者が個別に表計算ソフトで管理していたことも標準化の観点から解決が必要とされた。業務をシステムに合わせる、という考え方から、既存のパッケージソフトの利用を前提として選定を行った。
得られた成果
生産管理システムの導入により、原価や進捗が全社に可視化され、作業指示書や目標工数に基づいた効率的な生産が可能になった。また生産管理システムと連携した仕入れの発注プラットフォームの導入によって、調達関連業務は月間400時間の工数が削減され、効率化とコスト削減の効果が明確な数字として現れている。
こうした成功体験がデジタル技術に対する社内のモチベーションになり、ITストラテジストやネットワークスペシャリスト、データサイエンティストといった資格取得者の増加に繋がっている。
編集部コメント
システム化を考えるとき、自社の業務にシステムをあわせようとする傾向は多くのケースで見られます。一方で「システムに業務をあわせる」という”Fit to Standard”の考え方では、システムの設計の土台となっているベストプラクティスに沿って業務を標準化できる点で、長期的なメリットがあると言われています。DXを考えるとき、現状の業務をデジタルに置き換えるのではなく、どう業務を整理していくか併せて考えることで大幅な改善が実現できた事例と言えます。