概要
- 人の手間や大量のロスと引き換えに成立している高品質な国産果樹の生産を効率化
- 果樹園向け生産管理アプリ「Agrion果樹」によって生産をデータで管理
- 樹木ごとに個別のQRコードを設置し作業工程を記録、作業を最適化
DXの動機・背景
近年の高品質な果樹は、手間暇をかけた手作業と、着果不良果実の選別(摘果)によって実現されている。そのため多大な労働力を要し、特に収穫時期はそれが顕著だ。また残留農薬などの懸念から食品として利用できない大量の「摘果果」が生じており、品質と引き換えに多くのロスが発生している。もりやま園株式会社ではこれらのロスを価値に転換することも検討していた。
経過・対応・取組内容
ICTを利用したりんごの生産管理システム「ADAM(※現在は「Agrion果樹」)」を開発。広大な果樹園のなかにどれだけの品種が何本栽培されているかをQRコードタグで管理し、農作業の内容や散布農薬などを記録、PDCAサイクルを循環させることで効率的な生産管理を行う。スケジュールに厳密でなければ品質の劣化につながる収穫作業には一般的に多くの人員を動員する必要があるが、「ADAM」のデータをもとに最適な人数や配置を行うことが可能になった。
得られた成果
果樹ごとの作業記録をデータ化、作業工程を可視化することで進捗を把握し、スケジュールや人員の最適化を実現。たとえば「着色管理」と呼ばれる、葉を摘み果実に日光を当てることで色づきを促す作業を、果実自体の見た目が問われない加工用のりんごに対して実行することをやめることで、大幅な作業のロスが削減できたという。
またデータに基づき生産管理を徹底することで、通常は利用できない「摘果果」を安全に利用できる栽培手法を確立し、シードルの生産への転用を実現した。
編集部コメント
もりやま園の公式サイトによると、りんご農家における年間作業の75%は、枝葉や果実を“捨てる”作業とのことです。データによって全体を把握、生産を効率化・可視化し、ロスとなっている箇所を発見・転用することで収益の向上につなげた本事例の着眼点は、農業をはじめとしたな分野の生産・製造に適用できる発想です。