概要
- 合計8台の搾乳ロボットを導入し、無人で搾乳を行う
- 規模による効率化を狙い小規模酪農家が共同で設立した農場
- 搾乳時に乳量や健康状態など個体ごとのデータを収集
DXの動機・背景
近年、酪農業界は収益性の低下や後継者不足など様々な理由で離農・廃業が増加し、生産性の向上と省人化が同時に求められている。こうした状況下で、北海道江別市で小規模酪農家を営んでいた5人は、牧場施設の老朽化に際して現状の設備に再投資するのではなく、集団化することで効率の良い酪農を目指すことを選択。共同法人として「株式会社Kalm角山」を設立した。
経過・対応・取組内容
Kalm角山は搾乳ロボット8台を導入した、最大級のロボットファームだ。乳牛は自発的に搾乳ロボットの位置に移動し、無人かつ自動で搾乳が行われている。総頭数650程(2018年時点)の搾乳が行われているという。搾乳の際には個体ごとの乳量や健康状態、発情などのデータを収集しているので、パソコン上でデータを一覧できる他、異常があればアラートが表示される。またロボットによる搾乳は牛の乳房への負担が少なく、ストレスの低下へと繋がっているとのことだ。
得られた成果
ロボットの導入と乳牛にとってストレスの低い環境下での飼養により、生産量は導入前後で4倍の4500トンに増加した。また従来は搾乳人員として臨時に雇用していた人件費が、およそ1500万円削減されているという。同社では、将来的にはTMRセンター(酪農家が共同出資して設立する餌の供給センター)やバイオ・エネルギー部門などの部門を管理するホールディングスとしての事業体を構想している。
編集部コメント
生産性と規模は多くの場合相関します。本事例は、小規模酪農家が個別に設備投資を行うより、統合・大規模化したうえで設備投資を行うほうが合理的と判断したことがきっかけでした。とはいえ、元来は小規模の酪農を営んでいたことから、大規模農場での牛の管理が可能であるかが論点になったこともあるそうで、個体ごとの情報を収集できるシステムの存在を知り、それならば、と実行に至ったとのことです。