概要
- 介護ロボットとクラウドプラットフォーム導入によるサービスの質・現場の働き方改善
- 介護施設利用者の状況を把握しQOLを高める
DXの動機・背景
社会福祉法人 善光会は「諦めない介護」を理念とし、ロボットやセンサリングなどの先端技術を用いた介護の場を提供している。高齢化が進み、毎年人口が減少している日本では、2065年時点での総人口に対する高齢化率(65歳以上の人口割合)は38.4%になると推計されており、介護業界の人材不足は必須と見られている。そのため、先端技術によって人材不足を補い、介護現場の生産性を図ると同時に、生活の質を向上させることが大きな課題となっている。
経過・対応・取組内容
善光会では、介護ロボットやセンサーなどを活用して、介護現場のあり方を大きく変えている。フラッグシップともいえる複合福祉施設「サンタフェガーデンヒルズ」には「サンタフェ総合研究所」を設立。介護ロボットの開発・臨床研究や人工知能研究が行われている他、福祉関連事業者の経営支援も行われている。
善光会の施設では夜に高齢者の睡眠の深さやトイレのタイミングをセンサーが自動で検知して職員に知らせるなど、実用的な取り組みが行われているのが特徴だ。こうした技術をいくつも取り入れる中で、いくつもの異なる画面をチェックする手間が生じるという問題も発生したが、統合プラットフォームを開発することにより解消した。
得られた成果
ロボットをはじめとする先端技術と、それらを統合するクラウドプラットフォームを導入することにより、介護施設利用者それぞれの心拍数や呼吸の状態を検知・把握することが可能となった。施設利用者が転倒したり、ベッドから転落したりした場合でも、センサーがその動きを感知してただちに職員に知らせるため、適切な対応を取ることができる。こうしたシステムを導入することにより、深く眠っている時間が20%以上長くなった施設利用者も多数いる。
職員の業務負荷も大幅に低下し、夜間の見守り時間は37%減少したという。
編集部コメント
介護現場の負荷を可能な限りシステムやロボットに置き換え、職員負荷の解消とサービス品質の向上を目指す事例です。特筆すべきは、様々なロボットやツールの統合プラットフォームの存在です。多くの機器を導入すれば、それだけ見る画面も増え、手間が増加するという本末転倒な結果も起こりえます。本事例でも同様の事象が生じましたが、善光会ではひとつのプラットフォームにまとめ上げることでこの問題を解決しています。多様なツールを活用させる・使いやすくする、という取り組みは、DXに取り組みつつある企業であれば参考になるはずです。