循環性に着目、ファッションブランドがデザイン工程を3D化

企業名

株式市場

非上場

創業

従業員数

資本金

売上高

主な事業

トミーヒルフィガーやカルバン・クライン製品の企画・製造・販売

概要

  • 従来のファッション業界のあり方では難しい、世界の新たな価値観への対応を目指す
  • 技術インキュベーターを設立し、3Dデザインを導入
  • ・ コレクション全てを3Dデザイン化し廃棄物を削減、循環性の高い商品を作成

DXの動機・背景

TOMMY HILFIGERは世界中にファンを持つ、アメリカ合衆国のアパレル、ライフスタイルブランドだ。合同会社PVHジャパンが日本国内に約140店舗を展開している。
同ブランドは、サステナビリティやダイバーシティーなど、世界の新たな価値観を取り入れ、製品に反映してきた。現在、消費者は商品が地球に及ぼす影響に関心を持ち、サーキュラリティ(循環性)の気運が世界中で高まっている。TOMMY HILFIGERは、ファッション業界はサーキュラリティについて、まだ初期の段階にあると捉えていた。商品のリリースまでに生まれる大量の廃棄物や、循環性が低い素材の利用への対策が必要だったからだ。
そこで、グローバル・デザイン・チーム向けに新しいデジタルシステムを導入し、サーキュラリティの向上を目指した。

経過・対応・取組内容

従来のアナログな製造のプロセスをデジタル化するため、同ブランドはデザインのデジタル化に特化した技術インキュベーターを設立。デザイナーが3D技術でデザインを起こし、構築する3Dデザインの導入に取り組んだ。
2017年に始まったプロジェクトでは、デザインのプロセスが一貫してデジタルで可能となる、独自のエコシステムの開発が進められた。生地とトリミングのアセットライブラリーを作成し、個々にサステナビリティの評価を参照できる仕組みを導入。デザイナーが3Dツールに慣れるための指導も合わせて行った。デザイナーの共感を得て、1つの商品ではなく何万ものプロダクトでの採用を目指した。

得られた成果

3Dデザインの導入で、サンプル制作は仮想プロセスへ変化し、実物の制作が不要となった。従来のサンプル制作で発生する廃棄物の削減を可能とし、工程の効率化に直結。サンプルのデジタル化は、サーキュラリティの面でだけではなく、消費者のニーズをより迅速に反映し、デジタルショールームへの投入もシームレスにできるメリットもある。
2022年春コレクションでは、100%の商品が3Dデザインによって生み出されるようになった。3Dデザインの研修とスキルアップは、デザイナーチームだけではなく、全ての製品チームが受講する。3Dデザインの可能性は、同ブランドの制作から販売、あらゆる活動のデジタル化を後押ししている。

編集部コメント

本事例では、3Dモデリングを活用して、ブランドの信用や競合との差別化につながる、サステナビリティやサーキュラリティの取り組みを実践しています。ビジネスとしてみれば、3D技術を扱えるようになることで、ものづくりが高速化され、マイナーチェンジやバリエーション展開の製造コストの低下にも繋がります。アパレル以外の製造業でも検討できる分野は多いでしょう。

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