読み込み中...

ブロックチェーンで実現する透明・公正なカーボンクレジット取引
前例のない取り組みにPoCから参画、緊密なコミュニケーションを評価

Jasmy株式会社様へのインタビュー

  • ソフトウェア統括
  • 萩原 崇 様

二酸化炭素(CO₂)などの温室効果ガスの排出量を削減・吸収した実績を「クレジット」として取引するカーボンクレジット市場は、近年活況を見せているが、その一方で「透明性」と「公平性」という大きな課題が顕在化している。このカーボンクレジット市場の問題を、ブロックチェーン技術を活用したプラットフォームによって解決しようと挑んでいるのがJasmy株式会社だ。Jasmyが手がける『NCCX』プロジェクトと『わがまち』プロジェクトには、当社ディマージシェアが技術パートナーとして参画している。本インタビューでは、Jasmy株式会社 ソフトウェア統括 萩原 崇氏に、プロジェクトの背景と当社との協業について伺った。

良好で密なコミュニケーションが築けたことが成功の要因だと思います。
もしすべてのコミュニケーションをリモートにしていたら、これほどスムーズにはいかなかったでしょう。

ブロックチェーンで実現する「データの民主化」

Jasmy株式会社は2016年、元ソニー社長の安藤国威氏らにより設立された会社だ。“データの民主化”をコンセプトとし、現在はブロックチェーン技術を活用し、個人情報を安全に管理し、活用を可能とする「Jasmy Personal Data Locker」や、在宅勤務のセキュリティ管理を強化する「Jasmy Secure PC」などのデータプラットフォームを開発・運営している。

「現在のWebでは、実質的にGAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)などの巨大プラットフォーマーが多くの個人情報を収集し、そのデータを様々な企業が活用してビジネスを展開しています。しかし本来、個人情報はその人自身の財産で、そこから生まれる収益も、個人に還元されるべきだ――。これが、私たちの出発点となる考え方です。」

これらのJasmyのプロダクトに利用されているブロックチェーンは、公開型の「パブリックチェーン」ではなく、参加者が限定された高いガバナンスの「コンソーシアムチェーン」なのが特徴だ。

パブリックチェーンでは、確かに様々な技術を組み合わせて匿名性を守っているとはいえ、原則としてすべてのトランザクション履歴は公開される。これは、不特定多数のチェーン参加者が協力して合意形成を行う(マイニングを行う)仕組みのため、誰でも内容を確認できるようにしないと成り立たないからだ。ただし、履歴が公開されるがゆえに、間接的に取引の当事者を推測できる可能性が存在する。

「一方、私たちのコンソーシアムチェーンでは、参加者が限定されていて、マイニングは行われません。代わりに、参加者間の信頼に基づいた別の合意形成が行われ、記録される情報はすべて暗号化された状態で管理されます。そのため、たとえノード(ブロックチェーンネットワークに参加しているコンピュータやサーバーなどのデバイス)を保有している人が中身を見たとしても、意味のある情報として読み取ることはできず、高い秘匿性が提供できるのです。」

カーボンクレジット市場の課題解決に向けた挑戦

Jasmyでは、現在こうしたブロックチェーン技術と、カーボンクレジット取引を組み合わせた取り組みが行われている。そのきっかけについて、萩原氏はこう振り返る。

「我々が一緒にやっている大学の教授が、環境問題や都市問題を研究されている方なのです。その方とお話しているときに、カーボンニュートラルの実現にはカーボンクレジット市場が今後もっと重要になる、一方でカーボンクレジットの改ざん可能性や、グリーンウォッシュ(※)などの課題があり、デジタルで厳密に処理できていない現状があることを知りました。言ってしまえば、現在のカーボンクレジット取引には“あやふや”なままの部分がかなり残っているのです。」
※ グリーンウォッシュ:実質的な温室効果ガスの削減が不十分にもかかわらずカーボンニュートラルに見せかける行為

カーボンクレジット市場には、政府や国際機関が設定した制度に基づくコンプライアンス市場と、民間主導のボランタリー市場がある。後者のボランタリー市場は近年急成長しており、カーボンクレジット取引の活況を牽引しているが、一方で取引情報が限定されていたり、相場の把握や適正価格の判断が難しかったりするため、公正で透明な市場形成は発展途上だ。そのため、ボランタリー市場の健全化・透明化は今後のカーボンクレジット取引全体にとって重要な課題である。そこで、より正確で透明性の高い取引のためのインフラの整備に、Jasmyのブロックチェーン技術を活用した、ボランタリー市場での新しいカーボンクレジット取引所の構想が立ち上がった。
それが『NCCX(Natural Capital Credit Exchange)』プロジェクトだ。

検証と実装を重ねるPoCフェーズ

『NCCX』プロジェクトをはじめるにあたり、Jasmyはシステム開発のパートナー選定に着手した。

「すべて自社内で開発するのは、リソース上、難しいだろうと考えました。技術的にもお金を扱う以上、厳密な処理が求められるので難易度は高いです。我々は“データの民主化”のためのプラットフォーム構築が中心なので、こういうアプリケーションを作る事に手が回りづらいのですよね。そこで、開発にご協力いただける会社さんを探そうとなりました。」

ディマージシェアを選定した理由について、萩原氏は明確な条件を挙げている。

「パートナー選定には2つの必須条件がありました。まず、ブロックチェーン技術の開発経験があること。そして、ある程度の規模のシステム開発実績があることです。」

Jasmyが候補として選定した、ブロックチェーン技術を活用したシステム開発の実績を持つ企業の中で、ディマージシェアのNFT(※)関連プロダクト「NFT Nexus」の開発実績などが評価され、プロジェクトへの参画が決定した。
※ NFT(Non-Fungible Token):非代替性トークン、ブロックチェーン技術に基づく代替性のないデジタル資産

『NCCX』プロジェクトは2023年4月にPoC(Proof of Concept、概念実証)からスタートし、約1年間の検証期間を経て2024年8月に本格リリースを迎えた。

PoCは、本格的なサービス運営を見据えた実験的開発となるアプローチだ。実際にシステムを作り、改善すべき問題箇所を洗い出していく。

ブロックチェーンを利用した取引のシステムを開発するフェーズは、比較的順調に進んだ。『NCCX』の取引口座にカーボンクレジットが預けられるとトークン(本システム上においてはカーボンクレジットに関するデジタル証明書のようなもの)が発行され、売買が行われるとトークンも売却先に移転する。このトークンはCO₂の排出量との相殺が実行されるまで残り続け、“誰がどのトークンをどれだけ発行し、誰から誰に売却したか”が追跡できる仕組みだ。トークンはブロックチェーンの性質上、改ざんは困難であるため、信頼性は非常に高い。

取引の仕組みは実現できたが、ベータ版のリリースを経て、取引所としてのアプリケーション機能の開発には当初想定した以上のブラッシュアップが必要だということも明らかになった。

BtoB取引所としてさまざまな業界・業種のユーザーが利用するということは、リテラシーや商慣習も様々ということだ。より直感的にだれでもわかるUIへのブラッシュアップはもちろん、オフセット証明書のPDF発行のような事務処理に対応した機能も追加されていった。

PoCを通じて検証と実装を繰り返すアプローチでは、Jasmyとディマージシェアで緊密にコミュニケーションを取りながら、方針を齟齬なく理解しあうことが必要だった。

「プロジェクトの段階ごとに、ブロックチェーンが得意な方やUI/UXが得意な方など、さまざまな方に関与頂いて、非常に柔軟に対応していただけたので大変助かりました。特に、当社のオフィスにお越しいただいて、対面での打ち合わせを欠かさずに行い、メールやチャットツールも使って密にコミュニケーションを取っていただけたのが非常に良かったです。もちろん仕様書に基づいて進めてもらいますが、その時々で顔を合わせてお話できたことで、お互いの理解が進んだと思います。」

ブロックチェーンを利用した取引所という構想が実現できるのか、ユーザーが満足できるだけの品質にするためには何が必要なのかが明らかになるたびに、仕様の変更が発生する。そこで、長年に渡って新規事業のためのシステム開発を支援してきた当社では、ウォーターフォールを軸にしつつ、アジャイルを志向した開発スタイルによって、スケジュールに沿った進行と柔軟な仕様変更を両立した。

『NCCX』から地域密着プロジェクト『わがまち』へ

『NCCX』の取引は、中小企業や個人でのカーボンクレジット取引を可能にしたことが大きな特徴だ。従来のカーボンクレジット取引では、CO₂に換算して1トン単位で扱われるのが一般的だが、この取引単位は、個人や小規模な事業者が購入するには大き過ぎる。そこで『NCCX』では、カーボンクレジットを小分けにし、取引単位をキログラム単位へと小さくすることで、小規模ながら活発な取引を現実的にした。小規模な事業者でも利用しやすくなったことで、企業がカーボンクレジット付きの商品・サービスを提供し、個人が購入することで、間接的な環境貢献も可能だ。

「小さな単位での取引が実現できたことが、『わがまち』プロジェクトでの街単位の取引につながっています。ローカルな市場で、地元の大小さまざまな会社に向けてサービスを提供するためには、大きな単位の取引だけでなく、小さな単位の取引も扱う必要がありました。」

この『NCCX』で培った小規模な単位での取引を実現するノウハウを活用し、Jasmyのカーボンクレジット市場での取り組みは、地域密着型カーボンクレジット市場『わがまち』プロジェクトへと発展した。

『わがまち』プロジェクトは、地域で創出されたカーボンクレジットをその地域内で活用する、地域還元モデルプロジェクトだ。森林組合や農業法人などがCO₂吸収量に応じてカーボンクレジットを創出し、地域の事業者がそのクレジットを購入して商品・サービスに付与する。消費者はカーボンクレジットが付帯した商品・サービスを購入することでカーボンクレジットを取得し、返礼品や割引・クーポンなどの特典を受けられる仕組みだ。プロジェクトの第一弾として2025年6月から長野県で開始され、カーボンクレジットを活用した地域還元モデルの実証実験がスタートした。

「脱炭素の取り組みは政府主導で行われるほどの大きな課題です。自然豊かな長野県で、こうした新たなカーボンクレジットの仕組みが広がるように、我々も尽力しています。まずはこの実証実験を成功させ、将来的には『わがまち』プロジェクトを、長野県から各地へと拡大していきたいと考えています。」

自治体に加えて規模・業種が多様な企業と参加が見込まれる『わがまち』プロジェクトでは、さまざまな立場・リテラシーのユーザーが参加しやすいよう、『NCCX』プロジェクトよりもさらに使いやすいインターフェースが求められており、実際の運用を通じて改善が続けられている。

対面コミュニケーションが培ったパートナーシップ

2年近くに及ぶ協業を振り返り、萩原氏はディマージシェアとの関係性について次のように評価している。

「なによりもコミュニケーションの質が良かったですよね。対面での打ち合わせをはじめ、常に密なコミュニケーションを取り続けたことが成功の要因だと思います。カーボンクレジットとブロックチェーンという専門性の高い分野だからこそ、なおさら顔を合わせて話せたことが有意義でした。もしすべてのコミュニケーションをリモートだけで完結させていたら、これほどスムーズなプロジェクトにはならなかったでしょう。」

カーボンクレジットという専門性の高い分野の、技術的・業務的な理解の両方が求められるプロジェクトで、コミュニケーションの質 を重視し、適切な提案を行えた点を評価していただけた。

『NCCX』プロジェクトの登録社数も増え、『わがまち』プロジェクトの実証実験も滑り出した。Jasmy株式会社との協業は、単なるシステム開発を超えた、新しい市場創造に向けた挑戦的なプロジェクトだ。

「今後もディマージシェアさんとは協業の機会を増やしていきたいですね。『NCCX』や『わがまち』という大きなアプリケーションを継続的に運用していくとともに、当社のプラットフォームそのものをより魅力的にできるよう、これからもお願いしていきたいなと思います。」

ブロックチェーン技術を活用したカーボンクレジット取引プラットフォームという、先例のない分野に取り組むJasmyの技術パートナーとして、これまでに培われた信頼関係を基に、今後もビジネスの創出とグロースに貢献して行きたい。

会社名
Jasmy株式会社
事業
  • ブロックチェーン技術を用いたITサービス開発のためのプラットフォームの開発、保守及び運用
  • IoTデバイス情報を利用したソリューションサービスの開発、保守及び運用
  • IoTデバイスの設計・開発

CASESTUDY

お客様の声

プロジェクト事例