宿泊施設の省人化運営を支える
システムのマイグレーション
属人的な開発から脱却し、
事業成長の基盤を整備
株式会社REAH Technologies様へのインタビュー
- 取締役 事業本部長
- 鈴木 悠紀 様
株式会社REAH Technologies(リアテクノロジーズ)は、東京・大阪・京都エリアで21棟、およそ650室の宿泊施設の運営を手がける企業だ。施設の省人化運営を強みとする同社は、事業拡大に向けて予約管理システムなどのリニューアルを実施した。ブラックボックス化した属人的なシステム開発から脱却し、ドキュメントが整備された保守性と拡張性の高いシステムへと刷新するためのリニューアルプロジェクトに、ディマージシェアが携わった。
今までは、エンジニアさんとの会話は、専門的すぎて我々には難しすぎるという印象がありました。
ディマージシェアさんの場合、まずビジネス目線でコミュニケーションできるのが非常にありがたかったです。
省人化・効率化された宿泊施設運営
株式会社REAH Technologies(リアテクノロジーズ)は、居住用マンションを宿泊施設として運営するレジデンシャルホテル(同社では「レジホ®」と呼称)型の宿泊施設ブランド『BON』を運営している。居住用として作られた客室は、一般的なホテルと異なり、広いスペースにリビングや寝室が分離され、キッチンなどの生活設備が充実していることから、複数人での長期滞在にも向いているため、主にインバウンド観光客などの長期滞在を中心に利用されている。
リアテクノロジーズ最大の強みは、デジタル技術を活用した省人化運営にある。
「通常のホテルであれば、1施設ごとにフロントがあって、支配人をはじめとした組織体制が存在します。しかし当社の場合、例えば東京であれば、6施設を管理している社員はわずか3名です。」
施設を管理する人員などの管理コストから、一般的なホテルでは客室がおよそ150~200室なければ採算が取れないこともあるが、リアテクノロジーズの省人化されたオペレーションでは、30室程度から出店することも可能だという。
「物件のオーナーさんの目線でいえば、建物を収益化するには賃貸マンションにしたり、テナントを入れたりすることが一般的ですが、そこに宿泊施設という、あたらしい選択肢を加えることができるのが当社の価値だと思っています。」
リアテクノロジーズは民泊予約サービスを運営する、民泊業界の草分けである株式会社百戦錬磨の一部門から分離・独立した企業だ。創業当初からインバウンド需要の拡大を見込んでいたものの、直後にコロナ禍が直撃し、苦境に立たされることになった。
「コロナ禍初期の2020年は、利用者数が前年同月比で95%減という状況でした。」と鈴木氏は当時を振り返る。
この危機的状況を、物件の高層階はマンスリーや定期借家契約、低層階は民泊として運用するという柔軟なハイブリッド運営などを実施して乗り切った。
「2023年10月にインバウンドの入国規制が緩和されてから、一気に需要が増えてきて安心しました。現在、お客様の割合でいえば、インバウンド需要が8割くらいですね。アジア圏から欧米、オーストラリア圏など、幅広い国からのお客様にご利用いただいています。」と、取締役の鈴木氏は説明する。
ブラックボックス化した予約管理システム
旅行・宿泊施設業界では、宿泊予約サイト(Online Travel Agent = OTA)からの予約を「サイトコントローラー」と呼ばれる予約一元管理システムに接続して、予約状況の管理や料金設定、在庫(空室)管理を行うのが一般的だ。リアテクノロジーズでは、そのサイトコントローラーからさらに自社開発の管理システム「Admin(現在は「Reboot」と改称)」に接続して、予約管理と売上状況を統合している。また、宿泊に伴い要求される身分証の画像データをアップロードするシステム(「Identification」と呼称)も存在している。
当初「Admin」および「Identification」の開発は、フリーランスエンジニアに依頼していたが、4年近くに渡る開発によって、次第に課題が浮き彫りになってきた。そのひとつが、要件定義に起因する設計の問題だ。
「最初からシステムに必要な要件をすべて見通せたわけではないので、運用していくうちにどうしてもいくつかの箇所で『この部分の作り方が甘いな』と感じるようになりました。例えば、各種宿泊予約サイト(OTA)側で仕様変更があったり、手数料率が変わったりしても、簡単に変更することができなかったんです。事業運営に直結する部分がままならないのは辛いですね。」
さらに、属人的な開発体制によるブラックボックス化も問題だった。フリーランスエンジニアによる開発は、途中で何人かにバトンタッチしながら進んでいた。そのため、ドキュメントが存在せず、システム全体がどのような思想で設計されているのかも理解できない状況が生じていた。新しい機能を開発しようとしても、既存機能への影響範囲がわからず、安全に変更を加えることができない不透明なシステムは、省人化を強みとするリアテクノロジーズにとって大きな足かせになっていた。
将来的な事業成長のリスクを解消するため、リニューアルを依頼できるシステム開発会社を探すうちに、当社ディマージシェアと出会ったのが、コロナ禍のさなかである2021年だ。
とはいえ、業績が大きく落ち込んでいた時期のため、まとまった投資をすぐに決断することは困難だった。本格的なプロジェクトの開始は、インバウンド需要が回復し、事業が安定軌道に乗るまで待つことになった。
ビジネス目線でのコミュニケーションが決め手
ディマージシェアとの最初の打ち合わせで、鈴木氏が最も印象に残ったのはコミュニケーションスタイルの違いだった。過去の経験をこう振り返る。
「以前も業務でエンジニアさんと会話をする機会は頻繁にありましたし、フリーランスエンジニアの方ともやり取りしていましたが、どうしても話の内容が専門的になるので、我々では理解が難しいと感じることが多かったんです。ディマージシェアさんの場合は、まずビジネスの目線で会話できるのが非常にありがたかったです。システムに関する専門的な内容も、我々が理解できるように説明してくださいます。」
ビジネスサイドが理解できるような説明をエンジニアがしなければ、プロジェクトを進めるべきかどうか判断を下すことはできない。コミュニケーションの取りやすさは、システムの開発以上に、システムを用いたビジネスの成否に直結する重要な要素だ。
実際の開発プロセスでも、リアテクノロジーズが想定していなかった要件も含めて「このような場合も考えられますね」と確認を重ねながらコミュニケーションを深め、スムーズな開発を実現することができた。
「Admin」から「Reboot」へ
予約・売上を管理する「Admin」は、既存の仕様を分析し、再設計・再開発することで新たな管理システム「Reboot」にリニューアルされた。機能や使い勝手を引き継ぎつつ、従来は手間がかかっていた、宿泊予約サイトの仕様変更や、手数料率の変更に対しても、容易に対応できる可変性を備えたシステムへと改善が図られた。また、大きな課題であった属人化・ブラックボックス化は、再設計した仕様をすべてドキュメントとして整備することによって解消された。同様に「Identification」も、機能を継承しながら刷新された。
新システムは順調に稼働しており、予約管理システム「Reboot」は販売チームと経理・バックオフィスチームが利用し、売上管理と料金調整業務を担っている。
「一切ドキュメントがない状態から、仕様を明らかにしながら情報を整理してもらいました。あわせて、運用するうえで挙がっていた機能の不満はしっかりと解消していただきました。」
開発は週1回の定例会議を中心に、必要に応じてスポットで打ち合わせながら進行され、密なコミュニケーションを維持した。当社ディマージシェアからはもちろんのこと、リアテクノロジーズ側からのレスポンスも常に迅速だったと、当社エンジニアはコメントしている。
「例えば、お客様から『施設の前まで来たがチェックインできない』と緊急の連絡が入ったとして『調査して明日回答しますね』では済まないです。普段からこうした問い合わせに対応しているので、当社では迅速な対応が習慣化しています。」
システム開発プロセスに対して深くご理解いただき、適切にご判断していただけたけたことも、プロジェクトの成功につながったひとつの要因だ。
「無理な要求を通すよりも、論理的に説明して、双方が納得して動いていただいた方がお互いに良いですよね。」とは、鈴木氏の言葉だ。
お客様のビジネス目線に立ったコミュニケーションを経て、現在では相互に理解しあえるパートナーシップを築けたことは、ディマージシェアにとっても大きな収穫だ。
今後のビジネス展望とシステムの拡張
リアテクノロジーズの宿泊施設「BON」は、民泊・レジデンシャルホテルでは珍しいブランド化された施設だ。
「民泊やレジデンシャルホテルの業界では、マンション名で提供していることが多くて、ブランドがなかったりするんです。『BON』のファンになっていただいた方には、東京の『BON』に泊まっていただいたあとで大阪の『BON』に泊まって…というご利用をされている方もいます。」
ブランドとして統一されたサービス・施設の水準は、レビューサイトでも高く評価されている。リアテクノロジーズでは、今後もサービス水準と省人化を維持しながら施設数を拡大していくことを目指している。
「施設数を2倍程度に拡大する目算はすでにあり、将来的には3倍、4倍と事業を大きくしていきたいですが、例え施設数が2倍になっても、従業員数は1.5倍程度に抑えるように、省人化による効率運営は今後も推進していきます。でも、そうした省人化はわれわれ個々人がひたすら頑張れば実現できるかと言われると、それは難しい。やっぱり、システム化に負うところは大きいです。より人手を少なくしつつ、でもお客様の満足度や売上は変えずに拡大していきたいです。そうした機能の構想についても、今後ご相談できればと思います。」
と、ディマージシェアとの継続的なパートナーシップへの期待をいただいた。今回のプロジェクトは、ドキュメント化された保守性の高いシステムへの移行により、将来的な機能拡張を可能にすることで、事業成長を加速させるための基盤を再構築するという大きな意味を持っている。
民泊・レジデンシャルホテル業界で、デジタル技術を駆使して急成長するリアテクノロジーズの挑戦を、ディマージシェアは今後も支援していく。



